要点まとめ:データ専用eSIMはインターネット接続のみ(Maps、WhatsApp、SNS向けのGB)を提供し、通話付きeSIMは渡航先で使える現地の電話番号が追加され、発信・着信が可能になります。短期旅行の大半ではデータ専用eSIMで十分です。WhatsAppで通話をカバーできるからです。通話付きeSIMが必要になるのは、長期滞在や現地の電話番号が必要な手続きなど、限られたケースです。
データ専用eSIMと通話付きeSIMの本当の違い
通話付きeSIMを探している人は、おそらく「eSIMで電話はかけられるのか」「渡航先で自分にかかってくる電話を受けるにはどのeSIMが必要か」といった疑問を解決しようとしているのでしょう。この2つは異なる質問であり、それぞれに異なる答えが必要です。
データ専用eSIMは、PuraSIMが販売しているものですが、渡航先のモバイルネットワークにデータ通信専用で接続します。マップ、メッセージングアプリ、SNS、メール、銀行アプリ、動画配信などを利用するためのものです。専用の電話番号や音声回線は付属していません。技術的には、その回線で従来の電話を受けることはできません。その回線は電話回線ではなく、データ接続として存在するからです。
一方、通話付きeSIMは、従来の物理SIMカードと同じように動作します。契約した国の電話番号が割り当てられ、事業者の音声ネットワークを介した発信・着信が可能で、通常はSMSも利用できます。データ専用のものより料金が高い傾向にあります。事業者は単なるGBパッケージではなく、番号の確保や音声サービスの開設を行う必要があるためです。
混乱の原因は、現在ほとんどの人が「通話」をデータ経由で行っていることにあります。WhatsAppのビデオ通話、TelegramやFaceTimeでの通話は、技術的にはモバイルネットワークによる音声通話ではなく、データ通信トラフィックです。そのため、データ専用eSIMであっても、電話番号がなくても、多くの人が日常的に使っている意味での「電話」をかけることができるのです。
データ専用eSIMの実際の使い方
出発前に(Wi-Fiを使って)eSIMプロファイルをインストールし、到着したらモバイルデータ通信をオンにするだけで、数秒で渡航先のインターネットが使えるようになります。ローミングは不要で、ホテルのWi-Fi通信範囲に依存する必要もありません。契約しているキャリアの電話番号はそのまま維持されます。デュアルSIM対応のスマートフォンであれば物理スロットで「休止」状態になり、eSIM専用の端末で旅行する場合は、その番号はアクティブになりません。
データ通信が有効な状態でできること:
- オフラインマップに頼らずにGoogleマップやGPSナビを利用する(念のためオフラインマップもダウンロードしておくことを推奨)。
- 世界中の連絡先とWhatsApp、Telegram、FaceTime、Google Meetで音声通話やビデオ通話を行う。
- デュアルSIMモードで物理SIMをアクティブにしておけば、銀行やSNSなどの日本のアプリの確認SMSを受信する。
- リモートワーク、コンテンツのアップロード、アプリでのレストラン予約、現地のCabifyやGrabの手配などを行う。
その国で従来の音声通話を受けることや、タクシー運転手、ホテル、現地の行政機関からあなたの現地番号に電話がかかってくることはできません。平均的な旅行者にとって、これはほとんど問題になりません。旅行関連の事業者で電話が必要なところはほぼなく、メールや予約アプリ経由で連絡が来るからです。
通話と現地番号付きeSIMの仕組み
インストール手順は同じです。QRコードをスキャンするかプロファイルをインストールしますが、アクティベート時に通信事業者から滞在先の国(または地域)の電話番号が割り当てられます。この番号は一時的なもので、プランの有効期間中のみ使用でき、期限が切れると事業者が解放し、別の顧客に再割り当てされる可能性があります。
この回線を使えば、相手に追加料金が発生することなく現地番号からの着信を受けることができ、国内への発信(プランによっては国際通話も可能)ができ、さらに場合によっては、現地の銀行アプリなど、自国番号でしか認証しないサービスのSMS認証コードを受け取ることもできます。
注意すべき点があります。これらのeSIMの音声通話エリアは、データ通信エリアよりも地理的に限られていることが多く、同じ旅行中に隣国へ移動した場合に音声ローミングが使えないものもあります。また、分単位またはプラン単位の料金は、データ専用eSIMに比べて高くなります。購入前に、データ通信だけでなく音声通話の対象国もよく確認しておきましょう。
データ専用eSIM vs 通話付きeSIM:比較
| 特徴 | データ専用eSIM | 通話付きeSIM |
|---|---|---|
| 含まれるもの | モバイルデータ(GB) | データ(GB)+音声通話(分)+一時的な現地番号 |
| 専用電話番号 | なし | あり(契約した国または地域の番号) |
| 現地番号からの着信 | 直接は不可 | 可能(プラン有効期間中) |
| 滞在先から日本への通話 | WhatsAppなどのアプリ(Wi-Fi/データ通信で無料) | アプリ、またはプランによっては音声回線(有料) |
| データ専用版との価格差 | より安価 | より高価(音声通話と番号を含むため) |
| 一般的な地理的カバレッジ | データ通信は対象国または地域全体をカバーすることが多い | 音声通話のカバレッジは限定的な場合があるため、プランを確認 |
| インストール | QRコードまたは手動インストール、到着時にアクティベート | 同様だが、アクティベート時に番号が割り当てられる |
| 最適な用途 | 観光、リモートワーク、数日から数週間の旅行 | 長期滞在、現地番号が必要な手続き |
それぞれが向いているケース(抽象論ではなく、あなたの状況で判断)
ここが、多くの比較記事が物足りないところです。メリット・デメリットを羅列するだけで、あなたがどのケースに当てはまるのかが書かれていません。では、本題に入りましょう。
データ専用eSIMで十分なのはこんな人
- ヨーロッパやアメリカなどへの旅行で、Maps、WhatsApp、Instagramが使えれば十分という人。これが最も一般的な旅行者のスタイルで、そんな方にはヨーロッパ用データeSIMやアメリカ用eSIMが、使わない通話料金を払うことなく、すべてを解決します。
- デュアルSIMで旅行する人。物理SIMに日本の回線を入れておけば、電話やSMSはそのまま受信でき、eSIMはデータ通信専用に使えます。ほとんどの短期旅行で最も合理的な組み合わせです。
- デジタルノマドで、すでに生活のほとんどをアプリで完結させている人。ミーティングはGoogle Meet、連絡はSlackやWhatsApp、銀行の認証もアプリ経由でSMSは使わない、という場合です。
- 1ヶ月以内に日本に帰国する予定の人。短期滞在で音声通話付きの回線に追加料金を払う価値は、ほとんどありません。
通話付きeSIMを検討すべきなのはこんな人
- 数ヶ月単位で滞在し、大家さん、銀行、行政書士、医者など、「WhatsAppで電話して」が通用しない相手に現地の電話番号を伝える必要がある人。
- 仕事上、現地のクライアントや取引先が、国際電話ではなく、相手のWi-Fiやデータ通信に依存せずに電話をかけられる必要がある人。
- 現地の電話番号が必要な銀行口座や行政サービスのSMS認証が必要な人。これは現地で口座開設や賃貸契約をする際に発生することがあります。
そして、一見必要そうに見えて、実は不要なケース
週末パリに行くだけなら、通話付きeSIMを検討する必要すらありません。データ通信でWi-FiとMapsが使えれば十分ですし、もしお持ちの日本の回線がEUローミングに対応していれば、何も買う必要すらないかもしれません。リスボンやローマへの3、4日の小旅行も同様です。現地の電話番号が必要になる場面は、WhatsAppで解決できないことにはまず遭遇しないでしょう。2週間のアメリカ旅行でも、よほどの理由(例えば、レンタカーの電話確認が必要など)がない限り、データ専用eSIMが最も合理的な選択です。
ほとんど活用されていない裏技:デュアルSIM
最近のスマートフォンのほとんど(iPhone XR以降、ミッドレンジ以上のAndroid端末の大半)は、物理SIM1枚とeSIM1枚、またはeSIM2枚を同時にアクティブにできます。つまり、物理SIMスロットに日本の回線を入れたまま(ローミング対応プランなら電話やSMSを受信、あるいはそのまま待機)にして、データ通信用eSIMを渡航先でのメインのインターネット接続として使えるのです。
よくある失敗例:データ通信用eSIMを、iMessageやFaceTimeも含むすべてのプライマリ回線として設定してしまい、日本の連絡先へのWhatsApp通話が「鳴らない」、または端末がネットワークを正しく優先しない、といった問題に陥ることです。解決策はスマートフォンの回線設定にあります。データ通信のデフォルト回線をeSIMに、通話とSMSのデフォルト回線を物理SIMに設定しましょう。逆にしてはいけません。現地の空港に着いてWi-Fiもない状態で設定メニューを探す羽目になる前に、出発前に確認しておきましょう。
通話付きeSIMに関する誤解(ほとんど語られない真実)
「現地の番号がないと、誰も連絡を取れない」
実際にはそんなことはありません。特定の行政手続きを除けば、旅行中に連絡を取る必要がある相手(ホテル、レストラン、ツアー、Airbnb、ドライバーなど)のほとんどは、予約に使ったアプリやWhatsAppで連絡してきます。現地の番号が必要なのは、昔ながらの電話にこだわる人だけですが、そういう人はどんどん減っています。
「WhatsApp通話はデータを大量に消費する」
ビデオ通話は音声通話よりかなり消費しますが、WhatsAppの音声通話は、数GBのプラン全体から見れば比較的少ないデータしか使いません。本当にデータを消費するのは、何時間もの動画ストリーミングや高解像度のコンテンツをSNSにアップロードすることであり、通話ではありません。
「通話付きeSIMの現地番号は永久に自分のもの」
違います。その番号はプラン期間中に貸与されるものです。旅行から数ヶ月後にその番号に誰かが電話をかけても、つながることはありません。すでに通信事業者が別の顧客に再割り当てしているからです。
「データ専用eSIMではSMSを受信できない」
eSIM自体に関してはその通りですが、デュアルSIMで旅行する場合、物理SIMに入っている日本の番号は通常通りSMSを受信できます。日本のアプリの確認コードも含めてです。多くの人が見落としがちな注意点:出発前に、日本のキャリアがSMS受信にローミング料金を請求するかどうか確認しておきましょう。EU圏内では通常かかりませんが、EU圏外ではかかる可能性があります。
「通話付きeSIMは、データ専用eSIMと同じように全国をカバーしている」
常にそうとは限りません。データ通信のカバレッジは全国対応でも、音声通話部分は特定のネットワークやエリアに制限されていることがよくあります。通話がプランを購入する理由なら、支払い前に確認しましょう。到着後に、音声通話が使えない地域で気づいても遅いのです。
2つのeSIMを選ぶときによくある失敗
最も多い失敗は、「念のため」という理由で通話付きeSIMに余分なお金を払ってしまうことです。実際にそれが必要となる具体的なケースを確認せずにです。この記事を読んでも、現地の番号に誰かに電話をかけてもらう必要がある具体的な理由が思い浮かばなければ、おそらく必要ないでしょう。
2つ目の失敗はその逆で、3ヶ月のバックパッカー旅行中に現地の番号を一度も検討せず、後になって銀行口座の開設、一時的な賃貸契約の署名、現地の手続きでの本人確認に、その国の番号へのSMSが必要だと気づくことです。長期滞在の場合は、出発前に検討する価値があります。行き当たりばったりでは間に合いません。
3つ目は、デュアルSIMを初めて使う人にありがちな失敗です。物理回線のデータローミングをオンにしたままeSIMも使うと、気づかないうちに日本のキャリアからローミング料金が発生する可能性があります。eSIMをメインのデータ源として使うなら、物理回線のモバイルデータをオフにして、二重課金を防ぎましょう。従来のローミングとeSIMの違いや料金体系を詳しく知りたい方は、eSIMとローミングの比較をご覧ください。
迷わない選び方
決める前に、3つのシンプルな質問を自分にしてみてください。旅行期間はどのくらい? 現地の誰かが特定のタイミングで現地番号に電話する必要はある? それ以外は全部WhatsAppで済む? 2つ目の答えが「いいえ」または「わからない」なら、まずはデータ専用eSIMから検討しましょう。それが最も安く、最も柔軟で、ほとんどの旅行(行き先を問わず)をカバーする選択肢です。
予備の物理SIM、物理的な国際チップ、それとも直接eSIMかで迷っているなら、比較記事「国際チップ vs eSIM」が役立ちます。eSIMをインストールしたことがない方のために、手順は「eSIMのインストール方法」でステップごとに解説しています。所要時間は5分未満で、家を出る前にWi-Fi環境で行うことをおすすめします。
eSIMとは何か、従来の物理SIMとどう違うのかがまだよくわからない方は、「バーチャルeSIMとは」でゼロから説明しています。また、海外でデータネットワークに接続する際のプライバシーが気になる方は、「eSIMとVPN:併用方法」もあわせてお読みください。
最後に実用的なアドバイスをひとつ。複数の国をまたぐ旅行の場合は、自分のGBが十分に足りるか必ず確認し、「旅行中にeSIMのデータを節約する方法」で紹介しているような簡単なコツでデータを節約する方法を覚えておきましょう。自動更新やバックグラウンドのバックアップといった無駄なデータ消費を減らすほうが、おそらく使わない音声回線に余分なお金を払うよりずっとお得です。
よくある質問
データ専用eSIMで通話はできますか?
はい、ただしアプリ経由です。WhatsApp、Telegram、FaceTime、Google Meetは、音声回線や現地番号がなくてもデータ通信で問題なく使えます。ただし、そのeSIMには電話番号が割り当てられていないため、従来の電話番号への着信を受けることはできません。
ヨーロッパやアメリカへの観光旅行には、通話対応eSIMが必要ですか?
ほとんどの場合、必要ありません。数日から数週間の観光旅行であれば、データ専用eSIMでナビ、地図、アプリでの連絡は十分カバーでき、おそらく使わない音声回線に余分なお金を払う必要はありません。
データeSIM使用中に、自分の日本の番号に電話を受けることはできますか?
はい、スマートフォンがデュアルSIMモードに対応しており、物理スロットに日本の回線がアクティブな状態であれば可能です。日本の番号への通話やSMSは通常通り届き、eSIMはデータ通信のみを担当します。
通話対応eSIMの現地番号は永続的ですか?
いいえ、一時的なものです。プランの有効期間に紐づいており、期限が切れるとキャリアはその番号を解放し、他の顧客に再割り当てします。長期的な連絡先として登録しないでください。
通話対応eSIMは、データ専用eSIMと同じように全国で使えますか?
必ずしもそうとは限りません。多くの通話対応プランでは、データ通信のカバレッジのほうが音声よりも広いことがよくあります。音声が購入の目的である場合は、支払い前にどのエリアやネットワークをカバーしているかを確認することをおすすめします。
データ専用eSIMで確認SMSを受信できますか?
eSIM自体には番号がないため、受信できません。ただし、デュアルSIMで日本のSIMをアクティブにしておけば、日本のアプリからの確認SMSは通常通りそちらに届きます。
「念のため」に通話対応eSIMに追加料金を払う価値はありますか?
一般的には、ありません。長期滞在、現地での行政手続き、現地のクライアントとの仕事など、現地番号が必要な具体的な理由がすでにある場合にのみ価値があります。その理由が思い浮かばないなら、データ専用eSIMが最も合理的な選択です。







